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2014年11月

Afina現代語訳46、肋間神経痛の鑑別法

〔鑑別〕肋間神経痛と鑑別しなければならないのは内臓の疾病より起こる脊椎圧痛点である。内臓の疾病によるものは脊椎に圧痛点があっても腋窩線および胸骨線における圧痛点がなく、また脊椎氷結法では消散しないことがほとんどである。しかも内臓の疾病には皮膚に知覚過敏点を発見するだろう。そしてその部分を按触することで症状が増悪するものである。たとえば胃部に疼痛があるときにこれを圧すれば脊椎の圧痛点もまた増悪し、皮膚知覚過敏も著明となる。

内臓の疾病の場合、多くは脊椎の両側に圧痛点があり、肋間神経痛にはただ一側にのみあるものである。もし神経痛で両側に圧痛点のあるときは脊髄に病原のあるものを疑う。

肋間神経痛は脊椎の圧痛部を圧するときはその神経痛を喚起する。しかし内臓の疾病においては脊椎の圧痛部を圧するときはほかの症状を呈する。たとえば不整脈の場合は再発または増悪し、胃病の場合はガスの排出をみるといったようにその疾患を表徴するものである。

 

 

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Afina現代語訳45、肋間神経痛の治療法

〔療法〕脊髄神経痛は脊椎の上部および下部から圧迫を試み、その圧痛のある部分を見つけ出し、氷結法を施してみると疼痛は腋窩線および胸骨縁においても消失する。

ガルバニー電流は鎮痛作用があるけれども、氷結法のほうがすぐれている。もし氷結法の装置がないときは脊椎側に圧迫鎮痛法を施すこと。

脊髄神経起根部の氷結法を施すときはおおむね結果はいいが中枢性の場合は効果がない。たとえば匐行疹に伴う疼痛なども顕著なをみることもあるが、中枢性に向かってはさらに効果ない。
 

 

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Afina現代語訳44、肋間神経痛

   第1 肋間神経痛

〔肋間神経痛〕肋間神経は中部が冒されたときは診断に苦しむことはないが、下部に至ると腹部の側壁および前壁に疼痛を感じるものだから誤診に陥りやすい。

肋間神経痛は以下三個の圧痛点がある。

 

1、脊椎の側で神経起根部の脊柱部圧痛点。

2、腋窩線上にある神経分岐部の側部圧痛点。

3、胸骨縁の胸骨部圧痛点。

 

第1はつねに発見しやすい圧痛点である。しかしもしこれを発見することができないときは、脊椎圧痛点喚起法を試みること。とはいえこれを試してみる場合、脊椎筋を弛緩させていなければ圧痛点を見つけ出すことはできない。

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Afina現代語訳43、仮性内臓疾患

     第一章 仮性内臓疾患

脊髄神経がときとして内臓の疾病のように神経痛をおこし、胃、心臟、腎、腸または膀胱の疾病と同じような症状を呈することがある。これに対して内臓自体の疼痛として治療を加えても何ら効果はない。そしてこのような症状はとくに肋間神経において多くみられる。しかし肋間神経は交感神経との吻合により多くの仮性内臓痛を表現するものだからである。

そもそも脊髄神経の胸部における分枝といったら上部においては胸壁にだけ分布するが、第7以下、第11の下部までいくとその一部は胸壁に、ほかの一部は腹壁に分布するものだから肋間神経という名称はしばしば誤解をよぶ原因である。脊髄神経根部の疾患で末梢に疼痛を訴えることはよくあり、肺炎または肋膜炎であるにも関わらず腹部や腸骨窩に疼痛を訴え、診断を間違わせることが少なくない。

〔神経痛〕はふつう一側を冒すことが通例で、発作性にくる。神経の経路に圧痛点がある。疼痛に伴う症状としては、知覚障害、血行の変調、つまり貧血または充血、分泌更新、栄養神経障害、および限局した筋肉の痙攣などである。

神経痛はただひとつの神経に限られるが、発作が極度に達するときはほかの神経に波及することがある。なお間歇的に疼痛が来るものだから、この原因を簡潔熱にもとめる人がいるが、神経痛は原因の如何にかかわらずすべて間歇的なものである。梅毒が原因の場合もあるが夜間発作がないときにはほかの原因を探すこと。

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スポンディロセラピーによる疾病治療のコツ

◇スポンデロテラピーによる疾病治療のコツ◇
(束京、大阪42年 7 月研修会講義要約)

均整 機関誌復刻版 中巻

スポンデロテラピーとは、特定の脊髄神経を刺激することによって、治病効果をあ げる脊髄神経反射療法のことであります。この療法はオステオパシー(整筋整骨療法) におくれること18年、カイロプラクティック(脊椎骨調整療法)には15年、すなわち1910年にエブラムスが創始した療法であり、前 2 者ではラチのあかない疾病を処理するために考え出された療法だといえましょう。調整法を紹介しますと下記の 3 つに分類されております。

1 、叩打法
1 、特定の脊椎骨の線突起上にタオル 1 枚程度の布をあて、その上に馬の鞍様の金属をのせハンマーで叩打する。
2 、叩打の速度は 1 分間 90以上、時間は 5 分〜10分間である。
3、当法は内部効果器の収縮ないし拡張をはかる必要のある体異常に用いる。血管の収縮をはかるためには高速度、拡張のためには緩徐、内界臓器の収縮をはかるためには緩徐、拡張をはかるためには高速度に叩打する。

 2 、圧迫法
1 、特定の脊髄神経上、すなわち特定の脊椎骨疎突起の側面部位ないし横突起聞を圧迫する。
2、当法は内界効果器の機能を高めるないし低下させる必要のある体異常に用いる。
3、圧迫の速度は、機能を高めるためには1分間に2回以上、低下をはかるためには1分間に1回以内、方法は1圧迫10秒以上30秒以内である。時間は一特定部位に5分ないし15分である。

 3 、氷結法
1 、脊髄神経の特異な過敏のために生じている体異常(主に痛み、炎症、痙攣)に用いる。
2 、方法としては、特定の脊椎骨線突起の後弓部ないし横突起間に塗布する。
3 、塗布薬液は、リゴリン、エーテル、クロールエチール、ベンジン等である。

以上はスポンデロテラピーの調整方法の要約でありますが、今から50年以上前のエブラムス時代の調整法がそのまま現代に通用するものではありません。したがって、 スポンデロテラピーは年々衰微の道をたどり、ようやく日本において特定の指圧業者、 野口整体などで方法のかわった反射法として用いられている状態であります。エブラムスの着服はすぐれたものでありましたが、調整方法に進歩が認められませんので衰退したものと思われます。すなわち、一部位に5分ないし15分間も刺激時間がかかったのでは実用化に添うたものといえないからでしょう。したがって調整方法について改善の適を得ればすばらしい臨床効果を期することができるものだといえます。
ここでは具体的な方法は示しませんが、左の事項を考慮にいれて調整の方法を考えれば、スポンデロテラピーの真価を発揮することができるはずであります。
普通健康体においては、刺激された神経は興奮を示し、同量度の継続刺激によってその興奮は上昇し、ある段階に至って興奮状態を持続する平坦期にはいり、平坦期における刺激の様式によって効果期に突入ののち消退期に入ります。すなわち、神経は 手技調整刺激に対して興奮期一平坦期ー効果期ー消退期の 4 段階の生理作用を示すわ けであります。
これを手技調整上、理解しやすく述べますと次のような刺激反応を示すわけであり へ ます。

1 、興奮期
神経は 6 秒ないし 15秒経過の刺激より興奮状態を示し上昇していく。興奮による分泌は興奮期に突入した10秒ないし15秒の聞にみられ、そのまま興奮は上昇していき、ある段階まで達します。この状態を興奮期といいます。
 

2 、平坦期
ある段階に達した興奮作用を持続している状態で、刺激をうけることが非常に気持のよい時期であります。普通 5分間程度で効果期にはいります。ただし刺激の様式により平坦期の持続時間は左右されます。手技調整の上手、下手はこの期の刺激法のコントロールによって決定されるわけであります。たとえば機能作用を高めたり、低くしたりするのも平坦期のコントロールしだいで決定します。

 3 、効果期
調整刺激の目的を達した最高時点であります。正常体では 1分間に 3〜5 回、 0.8秒ないし 1.6秒の自律興奮が効果器にみられます。

4 、消退期
調整刺激の目的が逮せられ、神経が興奮の最高時点をへて安定するところまで下降 し、正常の機能を営む段階に入る状態であります。

このように神経は刺激に対して基本的な4段階の生理状態を示します。しかしこれは普通健康体といわれている生体何すもので、異常体の場合はおのずから違ったものになります。しかし麻痺や痙攣(痛)状態にあるものは別ですが、異常体であっても調整刺激を2回加えると、次の刺激から健康体なみに反応を示すようになります。 このことは手技刺激を生業としているわれわれにとっていちばん大切な神経生理であります。 以上申し述べた事項を勘案して翻訳転載の下記に適用すれば、エブラムスの期待に添うことができましょう。なお協会員は手持ちの類別克復法に適用すれば答えは体がだしてくれます。
 

以上『均整 機関誌復刻版 中巻』より

 

 

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卵巣嚢腫を抱える患者に対する鍼灸からのアプローチ

卵巣嚢腫を抱える患者に対する鍼灸からのアプローチ
〜全体治療と体性-自律神経反射的解釈〜

 


本症例は毎回訴えの変わる例であるが、基礎疾患として卵巣嚢腫を抱えており、東洋医学的に診察するとベースに“脾腎陽虚”が読み取れることから、脾と腎の気を補う全体治療を施して功を奏した例である。

患者像:40代前半  女性  学生  既婚 未産婦
k
初回来院:20xx.5.30

主訴:
初回、⑴フワフワ感 ⑵右首肩こり
二回目、⑴喉のイガイガ⑵冷え ⑶首の動作時痛
三回目、⑴大腿裏の違和感 ⑵痰がからむ ⑶左鼻つまり

現病歴:
「フワフワ感」
寝て起き上がるときやお風呂などでフワフワすることはなく、
じっとしている時の方がフワフワする。
フワフワ感は一瞬でクラッという感じ。
倒れることはない。
月経は規則正しい。
病院にいってみたが貧血とは診断されず、薬も飲んでいない。

「右頸肩凝り」
肩凝りは折に触れて再発している。
今週気になった肩こりは、
普通にしていると気にならないものの、
しかし触ると硬い。
動作や生活場面で症状が強くなることはない。


既往歴:
*卵巣嚢腫
(一昨年、卵巣嚢腫が検診でみつかった。
その後検診入院(10日)。
卵巣造影で腰腹が痛くなった。
しかし大丈夫とのこと、手術なし。
月経はふだん三日くらい。

*仙腸関節炎(三年前、原因不明


家族歴:
特記すべきものはなし

個人歴:
運動は現在も過去もほとんどしていない。
自転車に10分乗る程度。

社会歴:
三年前まで五年間セラピスト。
三年前から銀行関係、受付事務・パソコン業務。
土日休み、一日は家事、一日は勉強。


所見:
頚肩腕の自発痛、夜間痛、上肢のしびれ無し。
筋力低下、膀胱・直腸障害、巧緻障害は無し。
頚の自動運動は、前屈、後屈、回旋は陰性。
右側屈で左頚部につっぱり感。
左側屈で右頚部につっぱり感があり、右側屈の方が辛い。

東洋学的診察では、脈が沈。
腹診で、左下が硬く(小腹急結)、痛みは無し。
下腹部が柔らかく、臍下不腎。臍周りが冷たく、足も冷たい。
舌診で、歯痕舌が認められる。
顔面蒼白ぎみ。

血圧:110/76mmHg
脈拍:80拍/分
                       

病態把握:
所見と合わせて、
本患者は現在、
二年以上も卵巣嚢腫を抱え、
しかも家庭と仕事と学生生活を並行させるハードでストレスフルな生活を送っており、
疲労が慢性化している。
以上のことから「脾腎陽虚」と考えられる。
そして、
「フワフワ感」に関しては、
授業中などにフワッともって行かれるようなと訴えており、
回転性でもなく、
立ちくらみでもない、
眼前が暗くなるわけでもなく、
平衡失調もない。
さらにじっとしているときに一瞬の出来事であることから、
過労からくる眠気ではないかとも疑われるが、
しかし今回は顔面蒼白があることから軽い貧血であろうと判断した。
「首肩凝り」に関しては、
重い教科書の持ち運びが増えたことによる筋緊張と考えられる。


治療方針:
東洋医学的に「脾腎陽虚」とみたが、
ドーゼに配慮して「脾気虚」を抽出、
まず益気健脾のため、
全体治療として脾の気を補いつつ、
各症状には標治法で対応した。

処置:

鍼)
天柱、風池、隔兪、脾兪、足三里、三陰交
40×18 五分置鍼

下風池、肩井
40×18 単刺

百会
40×16 五分置鍼

気を中心に集めるために百会、
天柱、風池、下風池、肩井は筋緊張の緩和。

脾の気を補うために脾兪、三陰交、
血を補うために隔兪、足三里。


VAS:
ふわふわ感(20→0)
右肩こり(16→8)


生活指導:荷物が重いのは避けられないのであえて触れなかった。

経過観察:
6/6(2回目)
「喉のイガイガ 」
「冷え」
「首の動作時痛」

血圧:100/70mmHg
脈拍:80拍/分

前回治療後、フワフワ感と肩こりは改善され、
現在はほとんど感じない。
今回は、
冷えと、喉のイガイガ感が気になる。
頚の動作時痛もある。
治療は、
改善が見られた為、
前回と同様に引き続き脾を補うことを継続して、
今回は冷えや喉が気になるとのことなので、
そして治療後の不快感もなかったようなので、
やはり益気健脾のみならず、
「脾腎陽虚」とみて今回こそは脾と腎の気を補った(温腎健脾)。

鍼)
天柱、肩中兪、隔兪、脾兪、
40×18 五分置鍼

足三里、三陰交
40×18 単刺

百会
40×16 五分置鍼

灸)
中髎ー7壮、米粒
照海ー3壮、半米粒

気を中心に集めるために百会、
天柱、肩中兪は筋緊張の緩和。

脾の気を補うために脾兪、三陰交、にT11脊際をプラス。
血を補うための隔兪、足三里。

照海は補腎のため、
そしてあわせて照海は喉の痛みに著効とされているため選穴した。
中髎は、
下腹、腰下肢の冷えをとるため。

VAS:
頚の動作時痛(5→0)


 
6/13(3回目)
「大腿裏の違和感 」
「痰がからむ」
「左鼻つまり」

血圧:98/60mmHg
脈拍:72拍/分

前回治療後、
喉のイガイガ感と頚の動作時痛は改善された。
今回は、
4日前に勉強会で7時間座り続けたためと思われる、
左大腿裏の違和感。
そして今週ふとした時に痰がからむ、
左の鼻づまりが気になる。
痰がからむのは前回の喉のイガイガ感の延長と捉え、
鼻つまりは今に始まったことではなく、
時に逆側に移動するとのことなので生理的なものと捉え、
今回も前回と同様に脾腎を補うことにして、
処置もそのまま継続。
ただ、
左大腿裏の違和感に関しては、
とくに目立った所見はとれなかったが、
しいていえば左屈動作で右に突っ張り感、
後屈動作で左腰が詰まる感じがあったため、
起立筋の筋緊張の緩和の為、大腸兪刺鍼のみを加えた。

大腸兪
40×18 5分置鍼

なお施灸に関しては、
反応をみて今回は、

中髎-7壮、米粒
照海-10壮、半米粒

とした。

VAS:
左大腿裏の違和感(29→0)
痰がからむ(13→?)
左の鼻づまり(15→7)



考察:
本症例は、
基礎疾患や過労からくる脾腎陽虚が各愁訴のベースにあると推測できる。
なぜなら、
1、基礎疾患(二年以上つづく卵巣嚢腫)をかかえている。
2、家庭と仕事と学校を並行させるハードでストレスフルな生活を一年以上送っている(過労)。
3、脈が沈。
4、下腹部が柔らかく、臍下不腎。
5、臍周り、足が冷たい。
6、歯痕舌が認められる。
7、顔面蒼白。
6、初診からこれまでを振り返るとしばしば腰下肢痛を訴えている。
といった所見が見られ、
これらはいずれも東洋医学的に「脾腎陽虚」に当てはまる。
ただ脾腎陽虚の代表的な症状である下痢に関しては問診の結果「ない」とのことでこの点に疑問は残るが、他に多くの症状が一致しているのでそのままとした。患者の現在を脾腎陽虚の進行過程と捉え、今後も下痢が出現しないように先手をうってゆきたい。
そして各症状には局所的な治療などで対処した。
それらは毎回違う愁訴であるにもかかわらずつどつど速やかな解決をみていることから、
やはり脾腎陽虚の治療原則である「温腎健脾」をベースとして施しておいたことが功を奏したと考えられる。

ところで、
ここで唐突なようだけれども視点を変えて、
本患者における卵巣嚢腫とその体壁反射についてすこし触れておきたい。
卵巣嚢腫は自然消退することがしばしばある(3ヶ月以内に35.6%、6ヶ月以内に66%という報告もある-資料13)にもかかわらず本患者はこれを二年以上も抱えており、
これが慢性疲労の大きな原因のひとつではないかと疑われる。
毎回まったく別の訴えがあがってくるのも、
基礎疾患(=卵巣嚢腫)による疲労がベースとなっており、
ちょっとした身体症状が顕在化しやすいものと考えられる。
触診結果を卵巣の自律神経支配レベルのデルマトームと照らし合わせてみても、
(卵巣の自律神経支配はT10,11そしてS2,3,4を中心に資料によって前後がある。-資料3.4.5.6.9.10.11.12.)
☆臍周りの冷え-T10
☆臍下の力なさ-T11
☆大腿裏の違和感-S2,3,4
など卵巣の内臓体壁反射として理解でき、
さらに、
左の下腹が硬いこと、
過去1年間の腰下肢の痛みや違和感に関してすべて左側で訴えていること、
これらは疾患のある左の卵巣からの反射が関係しているものと推察される。

そもそも卵巣は沈黙の臓器なので、
卵巣自体について愁訴外であったとしても当然であるが、
今回の処置穴が体性-自律神経反射的に解釈しても疾患のある卵巣にアプローチできており(脾兪、T11脊際、中髎)、
そのことが全身の体調管理に役立ったのではないかとも推測できる。

これまで一般に、
卵巣はホルモン調節ばかりが注目されており、
その特有の疾患においてもホルモン調節の乱れがフィーチャーされてきたが、
近年、
卵巣における自律神経性調節の重要性が明らかとなっており、
しかも、
体性感覚によって調節されうることが証明されている(-資料3.9.10.)。
つまり、
鍼灸治療でのアプローチが可能であるということである。

こんかい東洋医学的に「温腎健脾」の全体治療をベースに諸愁訴に対処することで充分効果を上げているので治療方針の転向は必ずしも必要ない。
しかし患者の健康をより積極的にサポートするためには、
まず卵巣嚢腫の茎捻転や悪性化などの最悪な可能性を避けるためにも婦人科での定期的な検診の重要性を確認しておかなければならない。
そして卵巣嚢腫に対する鍼灸治療の可能性を説明し、
より根本的に基礎疾患であるところの卵巣嚢腫をメインに据えた鍼灸治療にシフトすべきではないかと考える。


参考文献:
資料1、王財源『臨床中医臓腑学』p90,174~177 医歯薬出版 2003年
資料2、東洋療法協会編『東洋医学臨床論』p36,75 医道の日本社 2010年
資料3、佐藤昭夫、佐藤優子、R.F.Schmidt『体性-自律神経反射の生理学』p181~189シュプリンガー・ジャパン株式会社 2007年
資料4、石川太刀雄『内臓体壁反射』p3,8,175~187 木村書店  1960年
資料5、BRUCE IAN BOGART・VICTORIA H.ORT『解剖学・発生学』p160 東京化学同人 2011年
資料6、丸尾猛、岡井崇 編集『標準産科婦人科学 第三版』p149~164 医学書院  2004年
資料7、医療情報科学研究所編『病気がみえる〈vol.9〉婦人科・乳腺外科』p36,37,158~171 メディックメディア 2012年
資料8、Ruth Werner『マッサージ師のための疾患ガイドブック』p298 医道の日本社  2011年

資料9*ラットの子宮と卵巣の神経支配(2004年)
花田 智子 , 内田 さえ , 堀田 晴美 , 會川 義寛

資料10*「体性感覚刺激と卵巣血流」(2006年)
花田 智子

資料11*P-105 ヒト卵巣の神経支配 : 主に血管への神経分布(1999年)
今石 裕人 , 宮嶋 論 , 堀 大蔵 , 佐藤 典生 , 薬師寺 道明

資料12*卵巣の神経支配(1971年)
山岸 亜人

資料13*sasaki H,Oda M,Ohmura M,Akiyama M,Liu C,Tsugane S,Terasima Y,Tanaka T,T..Follow up of women with simple ovarian cysts detected by transvaginai sonography in the Tokyo metropolitan area,British Journal of Obstetrics and Gynaecology 106(5):415-420(1999年)




【病態生理】

「脾腎陽虚」とは、、、
[主因]腎陽は脾陽を温煦し、脾の運化作用を助けている(後天の本を運ぶ)。また、脾の運化作用の促進によって腎精を補充していく(先天の本を補充)。慢性疾患、疲労倦怠などから、長期化した下痢が起こり、水邪が長期間体内に停滞することによって腎陽虚となり、これに慢性化した脾陽虚が加わることによって本症が出現する。
[舌診と脈診]舌質ー淡嫩 舌苔ー白滑(陽気虚による) 脈ー沈弱、虚浮(気が脈外にういている。
[症状]本症は四肢寒冷、顔面蒼白(温煦失調によって気血が全身を充足できないため)など、腎の気化障害(水湿内停)と、脾の運化障害(陽虚)を主症とする。水気氾濫、水湿氾濫、陽虚寒証を呈したときには水気凌心証に注意する。腎虚による腰膝酸軟、腰下肢、下腹部の冷痛、気化障害、運化障害、浮腫、小便不利、五更泄瀉(腎虚)、下痢、滑脱などの症状がみられる。
[臓腑病機]〔腎〕陰寒内盛 〔脾〕気化障害・運化障害
*現代医学では、、、慢性腸炎、潰瘍性大腸炎、慢性下痢などはこれに属する。
[治療原則]温補脾腎(温腎健脾)、利水(腎を温めて脾を健全にする)を主とする。
[手技]補法

「脾気虚」とは、、、
[主因]過労、暴飲暴食、精神性のもの(思慮過多)、慢性疾患。
[弁証の解説]過労や暴飲暴食によって脾気を消耗し、運化機能が失われることにより、水穀と水液の運搬が悪くなって、消化や水液の代謝障害を引き起こす。
[症状]食欲不振(納少)、腹部膨満(虚性で食後に悪化)が起こる。また運化作用が低下して水湿の運化不利がおこり、泥状便を呈する。倦怠で無力(脾気不足によって気血が肌肉を滋養できない)。慢性胃腸炎、息切れ(宗気不足を誘発)、懶言(胃気の不足)、消痩、顔面萎黄(気血両虚)。
[治療原則]益気健脾(消化機能の増強)
[手技]補法

以上『臨床中医臓腑学』王財源

なお、
「脾気虚」が悪化して「脾陽虚」となり、
これと「腎陽虚」が重なって「脾腎陽虚」となる。


「めまい」について、、、
めまいにはぐるぐる回る運動性感覚を伴うもの(回転性めまい)と,眼前が暗くなる,
ふらふらするまたはゆれる浮動性感覚(めまい感)のものがある.回転性のものは内耳や小脳に急激な変化が起きた場合に発症し,浮動性の時は病変が徐々に進行するものや変性疾患に多い.
A. 注意を要するもの
〔症状〕
①運動感を伴わないめまい感で,持続時聞が長いもの.または,手足のしびれ,複視,ものを飲み込む時むせる(畷下障害)などの神経症状を伴うもの(中枢神経系の障害な
ど)
② 回転性めまいで起立・歩行などに明らかな平衡障害があるもの
〔所見〕
① 限振や直立,足踏みなどで平衡失調を示すなど平衡機能の障害がある.
② 障害部位により,種々の神経障害の所見が得られる.
B. 適応となるもの
メニエル病などの耳性めまいでは程度により鋪灸治療の対象となるが,適応となるのはめまい感である.
A) めまい感
〔病態〕
身体の平衡を保つためには,眼,内耳や各深部知覚からの情報が中枢でうまく統合される必要がある.この系統に障害が起きると平衡感覚がくずれてめまいが生じる.
鍛灸治療は,この系統の可逆性の機能的障害により出現するめまい感を主たる対象とする.
〔症状〕
めまい感は,ふらふらするなどの浮動性の感覚や眼前が暗くなる感覚で,肩こり,頭痛,高血圧,眼精疲労,更年期障害,自樟神経失調などに伴う.

「肩こり」について、、、
項部から肩甲上部,肩甲間部に及ぶ範囲の主観的に詰まったような,こわばったような不快な感じを総称したものである.
肩こりは,日々の生活の中での単純な疲労として最も日常的にみられる症候であるが,
頚椎疾患をはじめ,耳鼻科,眼科,歯科疾患,さらには内科疾患からいわゆる不定愁訴(更年期障害,自律神経失調症)にいたるさまざまな病気の主訴として訴えられることがある.
A. 注意すべきもの
各科領域疾患で,専門医の処置を緊急に要する器質疾患の存在が疑われるもの.
 B. 適応となるもの
最も多くみられる,日常的な身体的・心理的疲労に起因する肩こりが銭灸治療の最適応症となる.
〔病態〕
過剰使用による筋疲労,精神的緊張,自律神経の影響など機序は複雑に入り組んでいる.
〔症状〕
頚肩部や肩甲間部にこわばった不快感を感じるものから痛みにいたる症状を訴える.
強くなると,頭痛や顔面痛,上肢痛などの関連痛を生じる.
〔所見〕
愁訴部の圧痛や筋硬結以外に特徴的な所見はない.
〔治療方針〕
頚肩部,肩甲間部の圧痛や硬結が第一の治療点となる.精神安定や自律神経調整などが必要な場合もある.

 以上『東洋医学臨床論』東洋療法協会編

「卵巣嚢腫」について、、、
いわゆる卵巣嚢腫とは卵巣に生じる嚢胞状の病変の総称であり、腫瘍性のものを含め多種多様な疾患が包括されており定義は難しいが、資料6.7.8.から簡単に以下のようにまとめられる。
《卵巣嚢腫》とは一般に良性の卵巣疾患のことである。
たとえば非腫瘍性病変として「卵胞嚢胞」「黄体嚢胞」など。
それから腫瘍性病変のうち表層上皮性・間質性腫瘍、その中でもとりわけ頻度の高い「漿液性嚢胞腺腫」「粘液性嚢胞腺腫」「成熟嚢胞性奇形種」などがあげられる。
そして「多嚢胞性卵巣疾患」などを含めることもある。
 

 

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